はじめに
相模原、津久井、相模湖、藤野の地域の歴史や自然に触れながら、感じたことをつづり、さがみの魅力を伝えれたらと思い、このコラムを作りました。地域の歴史や自然、身近なことでもいいので、なにか情報をお持ちの方は、
ご連絡くださると助かります。毎週更新したいと思います。
今週のさがみ散歩 〜七歩目(三井)〜
三井。「みつい」と読みたくなる人が多いと思うのだが、「みい」と読む。滋賀県にある三井寺と同じ読み方をする。この名前は字の通り三つの井戸があったことによる。かつて、三井は甲州街道の裏街道のようなもので、八王子から久保沢、三井、千木良といったように相模川に沿った街道があり、その休憩場所になっていた。
三井の山には峰の薬師があり、山の峰の部分に位置している。山の峰にあるので、小さいと思われるが、意外に境内は広く、お寺の鐘もある。その先を上ると発電用の城山湖がある。春には三井大橋の坂の両脇に桜が咲き、桜のトンネルができる。また、秋にも枯葉が舞い、色とりどりの葉を見ることができる。そのため、三井を経由することがある。
小学校、中学校時代、中野から橋本まで学習塾にバスで通っていた。帰る時間帯には三井経由のバスが来ていたので、そのバスによく乗っていた。三井経由だと時間がかかったが、運賃が変わらず、景色が良かった。山を背にしている津久井湖の山の背を縫うように道があり、その道をバスが走った。そこから城山と津久井湖と明るい街並みを眺めることができた。満月のときには、城山の上に月、下には輝く街と湖があって、とても幻想的だった。これを目当てに三井経由のバスを乗っていた。日本人は星よりも月を愛でる民族であるが、これは山が多いことに関係しているかもしれない。山と月のコントラストはえも言われずよい。三井経由のバスから見た月はまさにその通りだった。
しかし、今はこの景色を見ることはできない。三井経由のバスが廃止されてしまったからだ。理由は採算性の問題だといわれているが、上中沢行きのバスを延長させればよいのではないかと思ったりする。ここ最近日本各地の路線バスは危機に瀕している。マイカーを持つ人が多くなり、買い物も駅前より国道沿いの大規模なショッピングセンターで済ませ、駅前の商店街がさびれ、駅行きのバスの乗客が減り、少子化の影響で、通学でバスを利用する人も減っている。そのため、便数が減り、さらに利用する人が少なくなるという悪循環が生まれている。そこで、国や地元の自治体が補助金やコミュニティーバスをだし、公共交通機関としての路線バスを維持している。
残念ながら、三井経由はその選にもれた。昔は甲州街道の裏街道として役割を果たした町だったが、今は陸の孤島といってもいいほどになってしまった。中野行きのバスがあるが、中野では大きな買い物ができにくい。橋本に出れば、ほとんどのものがそろう。三井に通ると、三井経由の復活をというのぼりがみられる。それだけ、バスを必要としている人がいるということを如実に表している。三井を通るたびに、あの風景を思い出し、バスが復活してほしいと思ってしまう。